正座
読み方:せいざ
関連語:あいさつ・お辞儀と握手・座布団・上座と下座・畳・襖・障子・茶道・華道・書道・香道・落語・詩歌・邦楽・筝・大正琴・三味線・尺八・琵琶
膝をおりまげ、膝下から足の甲を床につけ、尻を足の裏の上にのせる座り方です。現代の日本人の生活スタイルが洋式化していることもあり、この座り方をする機会は減りつつあります。
心身を鍛える
正座は一般的な生活のシーンでは行儀をよくするために用いられますが、芸道・武道の分野では作法の祖形、身体訓練の出発点です。この座り方は同一姿勢を維持することで腹筋と背筋を鍛え、また肩の力を抜いてゆっくり呼吸すれば、精神を統一し、心に平静さを与えてくれます。
様々な座り方をしていた日本人
正座は、古来から日本国民の正しい座り方として普及していたものではありませんでした。かつて日本人は時代や身分、着ている物、座る床によって胡坐〔あぐら〕、立てひざ、横座りなど様々な座り方をしていて、各々正しい座り方として普及していました。
今で言う正座のスタイルは本来「かしこまる」と呼ばれ、神前・仏前や茶室での儀式的な場面で用いられ、また主君に対して家臣がかしこまる姿でした。そんな一部の場面でしか用いられなかった正座は、いつ頃一般に普及し始めたのでしょうか。はっきりとはわかっていませんが、医学博士・入澤達吉〔いりさわたつきち〕の論文「日本人の坐り方に就いて」(史学雑誌第三十一編第八号 1920)によると江戸時代の元禄享保頃と推定されているのが有力とされています。
その後、明治時代の学校の教科書には正しい座り方として掲載され、推奨されていたようです。昭和中期まで、一般家庭の家には畳が敷かれ、ちゃぶ台、文机がありました。日本人は頻繁に正座する環境に生活していたのです。しかし現在は、西洋文化の浸透により椅子に座ることが多くなったため、正座をする機会は少なくなってきているようです。
正しく座ってしびれを回避>
正座は、長時間続けると疲れるものだと思っている方が多いようですが、足の親指を少し重ね、かかとに尻をのせず外側に向け足裏を自然に寝かせる感じにすることで、しびれが多少回避できます。
弓術・馬術などの一派で、その礼儀作法が明治初期の学校教育にも採用された小笠原流では正座の正しい座り方を提唱しています。それによると正座をすることで、体全体の筋肉が緊張し、脳に刺激を与えて頭の回転がよくなるそうです。
■参考文献・ウェブサイト
- 「坐」の文化論―日本人はな...講談社学術文庫 (665) 山折哲雄 講談社 1984
- 文化としてのマナー日本の50年日本の200年 熊倉功夫 岩波書店 2000
- 「神社の中のモノ・コト ? 円座(えんざ)と畳」『祇園神社(神戸・平野)』2002(2004/10)