挨拶
読み方・あいさつ
関連語:お辞儀と握手・名刺・正月・お中元とお歳暮・年賀状と暑中見舞い・熨斗と水引・餞別と土産・武道・武術
あいさつは世界共通の行動ですが、その方法は国によって千差万別のようです。日本ではお辞儀が一般的ですが、タイではお辞儀の代わりに合掌を、ポリネシアでは鼻を使ってあいさつをします。
また、今日の「おはよう」は「お早くから、ご苦労様でございます」などの略で、朝から働く人に対するねぎらいや気遣いの言葉でした。
対人関係の潤滑油
あいさつは世界共通の行動であるようです。ただ、属する社会やその文化の違い、挨拶する場面によって変化します。日本で代表的な挨拶といえばお辞儀です。場面や気持ちの深さによって腰を折る角度が変わります。一方西洋の方ではお辞儀の代わりに握手をします。男性同士では互いの手が地面に垂直になる定番の握り方ですが、異性間では男性が女性の手を親指以外の4本の指を握る形になります。タイでは合掌をしますが、相手との関係によって手を合わせる位置(目の上や頭の上、顔面の前、下など)が変わるそうです。ポリネシアのティコピア島では敬意を表す際、鼻を使います。互いに平等な関係では鼻と鼻同士を押し付けあい、目上の人に対しては手首に鼻を押し付けます。
昔から日本人は道行く人々には誰にでも、たとえ見知らぬ人でも声をかけてきました。挨拶が出来ない者は恥とされ、一人前とはみなされませんでした。今でもビジネスの世界、親戚や近所関係など各コミュニティの中ではそういった傾向が見られます。「おはよう」などの挨拶語やお辞儀などは、最も基本的な日本の慣習として今後も残っていくでしょう。
ねぎらいと気遣い
昔は挨拶を「言葉かけ」と言い、他人と外で出会ったりすれ違ったりした際は言葉を掛けるのが一般的な礼儀でした。鎌倉時代の武家家訓、「極楽寺殿御消息〔ごくらくじどのごしょうそく〕」にも、誰であれ目にした人に対しては必ず礼儀としてあいさつをすべきと記されています。
今日の「おはよう」は「お早くから、ご苦労様でございます」などの略だと言われています。それは朝から働く人に向かって言うねぎらいの言葉でした。「こんにちは」は「今日は、ご機嫌いかがですか」などの略で、お昼に初めて出会った人の体調や心境を気遣っていました。「こんばんは」は「今晩は良い晩ですね」など略だと言われます。また、「さようなら」は「左様ならば」の略のようです。「それならば私はこれで失礼いたします」のような意味の言葉になるのかもしれませんが、本来の意味は定かではありません。いつ頃からこれらの挨拶語が定着したのかははっきりしませんが、江戸時代の書物には「おはよう(ございます)」の表記がちらほら見られます。
世代間の変化
NHK放送文化研究所の調査によると、昭和初期以前生まれの人では親戚間や近所、職場の人々との間において、なにかにつけ協力し合い、助け合う深い間柄でありたい思う人が多いようです。ところが、戦後生まれの人になるとそこまでの深い人間関係はわずらわしく、差しさわりのない程度につきあうのがいいと思う人が多いようです。この世代間の変化は対人関係の潤滑油である「あいさつ」をしない人口増加と相互に影響しあい、日本人の各方面での人間関係を薄めているような気がします。
■参考文献・ウェブサイト
- 美しいふるまい―小笠原流礼... 小笠原敬承斎 淡交社 1999
- いま生きる礼儀作法ラッコブックス 柴崎直人 新潮社 2000
- あいさつ上手になる本―場面... 雨宮利春 実務教育出版1998
- 現代日本人の意識構造NHKブックス NHK放送文化研究所 日本放送出版協会2000
- 儀礼の象徴性〈特装版〉岩波現代選書 青木 保 岩波書店 1998
- 関栄一「極楽寺殿御消息・現代語訳・目次」『御成敗式目』2004(2004/11)