名刺
読み方:めいし
関連語:あいさつ・お辞儀と握手・葬儀・結婚
日本で江戸時代から使われ始めた名刺は、現在ではビジネスマン必携物の一つです。当時は今のような使い方ではなく、訪問先が不在の際に来訪を知らせる意味で戸口の隙間に挟んで帰るという使い方をしていました。
ビジネスでの身分証明書
初対面のビジネスマンはしばしば名刺を交換し合い、お互いの名前、会社名、連絡先などを伝えます。自社の宣伝の意味をかねて「○○ならお任せください」と渡す場合も多々ありますが、本来は将来の親交を考え、「今後よろしくお付き合いください」という意味合いで交換するものです。名刺はその人の身分証明書であり、名刺を丁寧に扱うことで名刺をくれた人に敬意を払っていることを表現します。ただ、海外では日本ほど名刺を丁重に扱うことはせず、先方の目の前でメモ書きしたり、即座にポケットにしまうこともよくあるようです。
ビジネスマンの必携物である名刺ですが、最近では医師が患者に渡して、コミュニケーションの促進に役立てようとする病院もあるようです。
名刺はなぜ「名紙」ではないのか
名刺は世界中で使われており、その歴史も各国独自で発展してきたようです。最も古いのは中国で、唐の時代の文献には木や竹製の名刺の記述が散見されます。「名刺」という言葉は中国の古語です。語源は名を書いた竹の札のことを「刺」といったことに由来します。当時の使い方は今とは違い、訪問先が不在の際に、戸口の隙間に挟んで来訪を知らせる目的で使われました。
日本で名刺が使われ始めたのは江戸時代で、和紙に墨で名前を書いて上記と同じ目的で使用されました。江戸末期には印刷した(おそらく活版ではなく、一枚の木版で刷られた)名刺が使われ始め、来日した外国人と交流するために用いられました。その後、一般の人々の間でどう普及していったかはよくわかっていませんが、上流階級の人々の間では鹿鳴館時代(明治初期)に社交の道具として使われました。
名刺の種類と交換のマナー
名刺のサイズは91×55 mmが標準サイズです。海外では企業によってまちまちなことも多いですが、整理のしやすさ等の利点を考慮してか、日本で見かけるのはほとんどこのサイズです。掲載事項は名前や会社名、肩書き、連絡先などが一般的です。より多くの情報を載せる場合は、二つ折り形式のものも作られます。他に四つ角を丸く加工してあるものや、切り絵加工、型押し加工がしてあるものなど、多くの種類があります。ビジネス用ではなくプライベート用で作られる名刺は、凝ったデザインのものが多いようです。顔を覚えてもらうという意味で顔写真や似顔絵を入れる名刺もあるようです。最近では携帯電話でメールアドレスや電話番号、URLなどを読み取るQRコードを入れる企業もあるようです。
名刺交換はまず先に目下の人が目上の人に渡します。ただ、先方への訪問の際は、「お邪魔します」という意味を込めて訪問者が先に出します。また訪問者の方が明らかに目上である場合は、訪問を受けた側が先に出します。弔事で渡す場合は、右上に「弔」や「謹弔」と書き、左下の角を表側に折っておきます。慶事の場合、右上に「御祝」「御年賀」などと書き、左下角は折りません。
日本は世界で最も名刺交換をする国の一つと言われます。日本では比較的新しい習慣ではありますが、これも立派な日本文化の一つと言えるでしょう。ただ、最近ではカード端末から体表面に微弱な電気信号を伝わせ、握手するだけで名刺(に載せている情報等の)交換ができる技術まで開発されてきているようです。とても興味深い話題ですが、将来名刺文化が廃れていくことになるとしたら、なんだか寂しい気もしますね。