塩
読み方:しお
塩はほとんどの料理に用いる調味料で、人間の体の機能を保つためになくてはならないものです。昔から米と野菜が中心だった日本食では体に必要な塩分を摂取するために、塩を多くに用いられています。
塩の色々な効果
日本には昔から肉や魚、野菜を塩漬けにして保存食を作る風習があります。その代表的なものが漬物です。これは食材を塩漬けにする事によって、水分を吸出し有害な微生物の繁殖を防いで食品の腐敗を防止する、という塩の性質を利用した伝統的な加工法です。
この他にも塩には様々な効果があります。リンゴや桃などは皮を剥いて塩水につける事によって、しばらく放置すると起こる色の褐色変化を防ぐことができます。これは果肉に含まれる褐色変化を引き起こす酵素の働きを塩が抑える働きをするからです。またほうれん草などの青菜類を茹でたり炒めたりする際に塩を加えると、塩のナトリウムイオンが青菜の組織内に浸透して色素の分子を安定させ、より色鮮やかに仕上げる事ができます。食用以外の効果として、殺菌作用があります。塩で歯を磨く事によって虫歯の予防になったり、洗剤の代わりに塩を用いることで殺菌効果が期待できます。
日本独自の塩作り>
日本で塩が作られるようになったのは、縄文時代の終わりから弥生時代にかけてと言われています。日本は海に囲まれていますが、雨が多く湿度が高い気候のため塩作りには大変な苦労があったようです。日本における最も古い塩づくりの方法は、海水のついた海草を燃やし、その後に残った塩の混じった灰をそのまま塩として使う方法です。やがてはこの灰塩に海水をかけてこし取り、これを土器に入れて煮詰めて塩を作るようになりました。こうした方法は日本独自のもので、「藻塩〔もしお〕焼き」と呼ばれています。この「藻塩焼き」を元にして、時代の移り変わりと共に、塩作りの方法にも知恵や工夫が施され、より効率よく塩を生産できる方法が開発されました。そのうちの一つに塩田方式があります。塩田方式とは海岸につくられた砂田(塩田)に海水を導き、天日で水分を蒸発させて濃縮し塩を作る製塩方式で、塩作りに適した波の少ない海岸や温厚な気候に恵まれている瀬戸内海沿岸で盛んに行われました。現在では最新技術を駆使したイオン交換法が発達し、塩田を見る事はできなくなりましたが、つい数十年前までは塩田方式が塩作りの主流でした。
生活の知恵
昔の人から受け継がれた塩を使った生活の知恵を紹介します。
・塩水で生花が元気に
花の切り口に濃い塩水をつけたり、塩を擦り込んでから花瓶にさす事によって生花が長持ちします。
・弱った金魚は塩水で回復
水中で横になったり腹を見せて泳いでいる弱った金魚は、ごく薄い塩水を入れた別の水槽に移してやります。すると金魚は回復して元気を取り戻します。
・氷枕は塩で長持ち
氷枕に塩を一つまみ入れると、急激に氷を溶かし氷枕の温度が低く保たれ長持ちします。
・玄関先や庭の凍結防止に
冬、雪が降るとなかな溶けずに道路や庭、日陰にいつまでも残ってしまい、凍結すると危険です。そこで、凍結防止、融雪・融氷に塩が使われます。特に日陰でいつまでも残っている雪を溶かす時に有効です。