石琴・サヌカイト
読み方:せっきん・さぬかいと
香川県だけに産出する自然石で、1891年ドイツの地質学者ヴァインシェンクが「讃岐〔さぬき〕の岩」の意をこめ「サヌカイト」と命名しました。 木槌で叩くと神秘的で澄んだ美しい音を奏でるところから、地元では「カンカン石」と呼ばれています。 この石をマリンバのように並べて音を奏でる楽器です。
癒しの音色
サヌカイトは音を発する珍しい石として、多くの人々の心を魅了してきました。
石琴は様々な改良が加えられ、ピアノの音階よりも上下に1オクターブずつ広い音階を奏でることが可能になりました。 また、サヌカイトの風鈴なども作られていて、今流行りの癒しグッズの一つとしても販売されています。
紀元前の歴史
約2万年前、日本列島に住んだ先史時代人は、サヌカイトで石器を作っていました。
サヌカイトは槍先や、やじりに用いられ、日常生活に密着していた石で、その響きは生活の音でした。 今から約百年前に、香川県の長尾猛〔ながおたける〕という人物がサヌカイトを研究採掘し、(※)声明〔しょうみょう〕など仏教音楽の伴奏楽器として、音階の奏でられる石琴を制作しました。
その美しい響きは、多くの人々の心を引き付け、東京オリンピック(1964年)の開会式でも用いられました。
※声明…仏教的な儀式の時に、僧によって唱えられる声楽の事。
讃岐の石
香川県瀬戸内地方だけに産出するサヌカイトが使用されます。
木琴(マリンバ)のように石片を並べて音階を奏でたり、石片を吊るして音階を奏でる「ソウ」という楽器にも使われます。 楽器制作には、音程と音質が適した自然石を地中から掘り出して音階順に並べるという、非常に手の込んだ作業が必要なので、現在でも自然石だけで作られている石琴は日本に数組しかありません。
■参考文献・ウェブサイト
- 『日本音楽大辞典』 平野健次・上参郷祐康・蒲生郷昭 平凡社 1989
- 邦楽百科辞典―雅楽から民謡まで 吉川英史 音楽之友社 1984
- 『サヌカイト 臼杵美智代』(2004.7.1)
- 『サヌカイト 古代の音色』(2004.7.1)