石州和紙
読み方:せきしゅうわし
関連語:障子
産地:島根
弾力があり強靭であるにもかかわらず柔らかな肌触りと、時期がたつにつれて、黄ばんだ状態からだんだんに白くなってゆく光沢のある紙面が特徴です。
製品検査が厳しく、昭和10年(1935)から品質を「稀〔まれ〕」(優良)、「鶴」(上等)、「亀」(中等)、松(下等)の等級に分けて検査が行われてきました。楮100パーセントで全く不純物の混ざっていないもの(稀)が最高級品とされ、「みざらし」と呼ばれます。
障子紙に好まれる強度
石州和紙の用途は、その強度から、障子紙として最も多く使われました。しかし日本経済の高度成長と共に家屋の建築形態が大きく変化し、障子紙に囲まれた暮らしは失われてきました。それにつれて石州和紙の用途も細分化され、文化財修理用紙、書道用紙、帳簿・賞状用紙、便箋・封筒・葉書類、色紙、短冊、名刺など多岐にわたって使われるようになりました。
藩全体が製紙工場に
石州和紙は、石見国(現島根県西部)の国司であった柿本人麻呂が、慶雲、和銅(704〜715)の頃、民に紙漉きを教えたのが始まりだとする説があります。近年発見された公文書によると、はじめはいろいろな規格や紙質のものを漉いていましたが、元禄(1688〜1704)の頃には現在の石州半紙の規格寸法や紙質が確立されていたようです。規格を揃え検査を厳重にすることで、藩全体が単一の紙をつくる大きな製紙工場のようになっていきました。
独自の漉き方が強度の秘訣
石州和紙は主に楮を原料とし、三椏〔みつまた〕・雁皮〔がんぴ〕などをトロロアオイの根で作った粘液で混ぜ合わせます。
紙の耐折試験を行うと、洋紙では十数回も折り曲げるとちぎれますが、重要無形文化財の指定を受けた「稀」は縦方向で3405回、横方向で660回まで耐えたという記録があります。
石州半紙は「横揺り」を加えずにネリの入った紙料を激しくこまやかに動かす「縦揺り」だけで漉きます。簀桁の操作に様々な変化をつけるので、繊維が十分に絡み合います。これが石州半紙の腰の強さの秘訣です
■参考文献・ウェブサイト
- 和紙文化辞典 久米康夫 株式会社わがみ堂 1995
- 日本の伝統工芸品産業全集 犬丸直 吉田光邦 ダイヤモンド社 1992
- 石州和紙久保田『石州和紙久保田』(2004.06.23)
- 三隅町役場「石州和紙・清酒環日本海」『三隅町公式サイト』(2004.06.23)
- 島根県しまねブランド推進室「しまねの伝統工芸」『しまねブランド』(2004.06.23)