羽織
読み方:はおり
[女性用]
羽織とは着物の上に着るもので、洋服で言うカーディガンやジャケットのようなものです。女性用羽織には本羽織の他に中羽織や茶羽織といった種類があり、普段着から正式な場で着用するものまで様々です。
格を高める役割
男物の礼装が紋付羽織袴〔もんつきはおりはかま〕なのに対し、女物の礼装である振袖、留袖、訪問着、などは羽織を着ない帯付き姿です。女物の紋付羽織は、男物のようにそのまま礼装として着るのではなく、小紋の着物などの上に着ることで、それらを準礼装という位置づけまで格を高めるという意味を持ちます。羽織には本羽織と呼ばれるものの他、中羽織や茶羽織などがあります。本羽織が、格を高めるという意味合いを持つのに対し、中羽織や茶羽織は防寒やチリ除けといった実用的な面を持っています。
羽織はコートと違い、室内でも脱ぐ必要がないため、内外問わずに着用できます。室内での寒暖の調節に便利な上、装いに変化が付けられるため、コートの代わりにも着られます。
女性用羽織の出現
羽織は、元々男性の着物でした。寛文年間(1661〜1673)以降、裕福な町人が小紋や縞地の羽織を着るようになり、丈の長い羽織でお洒落する男性が増えてきました。着脱が自由で便利、さらに防寒に優れた羽織はもちろん女性達も着たがりました。女性で初めて羽織を着用しだしたのは江戸深川の芸者さんと言われています。女性の間で羽織が流行し始めると、呉服屋は競って「女物羽織」を売り出しました。しかし、その頃羽織は男物に限り着用を許可されていたため、幕府は禁令を発し厳しく取り締まりました。一般の女性が堂々と羽織を着ることができるようになったのは明治に入り、四民平等が唱えられてからのことです。四民平等により、武家も農民も町人も、男女区別なく着られるようになりました。
本羽織と中羽織
羽織は次のような種類に分けられます。
中羽織・茶羽織…一般的に「羽織」というと中羽織の事を指します。中羽織の丈は膝上までで短く、袖の部分にマチが縫い付けてあります(褄〔つま〕)。黒紋付、絵羽模様のように大層な柄付けではなく、着物の模様を潰さないような落ち着いた風合いです。
また、中羽織と同じ外観で、マチが無いものが茶羽織です。茶羽織は家庭内で防寒を目的として着用するため、落ち着いた地味な色合いに作られています。最近では、旅館で貸し出される以外で茶羽織はあまり見かけなくなりました。
本羽織(長羽織)…黒一色で染めたもの(黒紋付)、色一色で染めたもの(色無地紋付)、華やかな柄を全面にほどこしたもの(絵羽模様)などを本羽織または長羽織といいます。既婚女性のみが着用でき、着物の格を上げるために着用します。絵羽模様の羽織は正月や会食、観劇などに着用し、黒紋付や色無地紋付は結婚式などの格調高い場で着用します。
本羽織の丈は、元々お尻の隠れる長さが一般的でした。しかし、現在は着物のおよそ7/10で、膝が隠れる程度の丈が主流となっています。また、最近は長い羽織が流行しているため、丈の長い中羽織を「本羽織(長羽織)」と呼ぶこともあります。
■参考文献・ウェブサイト
- UNIQUE-ID『KIMONO真楽』2004(2004.10.27)
- 「柄」きものと帯小学館文庫 浦沢月子 小学館 1999
- きもの歳時記平凡社ライブラリー (242) 山下悦子 平凡社 1998