伎楽
読み方:ぎがく
伎楽とは、中国から伝わった大きな仮面をつけて演じられる台詞の全くない無言劇です。
仮面舞踏劇のようなもので、聖徳太子の時代に盛んに行われていましたが、次第に大陸から伝わった雅楽などの新しい芸能の伝来によってだんだんと廃れていってしまいました。
飛鳥時代の仮面舞踊劇
日本では6世紀頃に、寺社の境内で仏の教えを深く理解させ、仏法を広めることを目的として、盛んに上演されていました。東大寺の大仏開眼(752年)の際にも、大規模な伎楽が上演されたと伝えられています。今も正倉院や法隆寺などには、百面を超える伎楽面が現存し、国宝として指定されています。伎楽面は、人顔・妖怪・獅子・金剛など様々です。しかし、演目については、現存している資料が非常に少なく、詳しいことはあまりわかっていません。
1000年もの年月を経て復活
ギリシャまたはインドの仮面劇を起源としています。中国の三国志時代(3世紀頃)に生まれた歌舞が、7世紀の飛鳥時代に日本に伝わりました。聖徳太子の時代には最盛期を迎え、各地の寺社には60人ほどの専属伎楽団が存在し、伎楽が境内で上演されていました。しかし、最盛期は短く、雅楽などに押され、衰退してしまいました。昭和55年に東大寺大仏殿にて約1000年の年月を経て復興され、現在、奈良の薬師寺にて毎年の恒例行事として伎楽奉納が行われています。
三蔵法師の物語
現在毎年の恒例行事として薬師寺で行われている伎学は、「三蔵法師 求法の旅」です。
これは、西遊記でお馴染みの三蔵法師が仏の教えを求めて天竺へ旅をするというストーリーになっています。 主役の三蔵法師役の役者は面をつけず、伎楽面をかぶった伎楽グループとのからみでドラマが展開して行きます。
物語がわかり易いように、創建以来の薬師寺の声明〔しょうみょう〕(※)で、地の文が語られるという、古典芸能に新しい工夫を加え、お寺の伝統を盛り込んだ薬師寺独特の伎楽の形で上演されています。
※声明…仏教のお経を朗唱する声楽の事。