躰道
読み方:たいどう
武道独特の直線的で静かな動きではなく、アクロバティックな動きを持つというのが躰道の特徴です。沖縄空手から生まれたこの武道は比較的新しいですが、その特徴あるスタイルで競技人口も増えてきています。その中でも女性の占める割合が多いというのも特徴の一つです。武道理念も独特で、他の武道とは一線を画しています。
「旋・運・変・捻・転」
空手の突きや蹴りを基本に、体の軸(脊柱軸)を自由自在に変化させながら攻防を行うというのが躰道の基本です。その動きはアクロバティックで、旋体〔せんたい〕(コマのような動き)、運体〔うんたい〕(波のような動き)、変体〔へんたい〕(木が倒れるような動き)、捻体〔ねんたい〕(渦を巻くような動き)、転体〔てんたい〕(空中で回転する動き)という5種類の技と、運足〔うんそく〕、運身〔うんしん〕という動きを組み合わせて攻撃を行います。古来からの日本武道にない地面に伏せてからの攻撃というものもあり、独自の世界を展開する新しい武道と言えます。
「発展に終わりはない」、「常に進歩していく」という信念をもっているため、現在も研究が盛んに行われています。健康や女性にやさしいという志向もあるため、女性の競技者がたくさんいます。
「生死の境」で誕生した武道
沖縄の「手〔てぃ〕」(空手の基になった武術)を母体に、昭和40年に成立しましたが、誕生までには創始者祝嶺正献〔しゅくみねせいけん〕の多大な苦労がありました。
第二次世界大戦末期の昭和20年、空手の玄制流最高師範だった祝嶺は特攻隊員として、敵艦に攻撃の命令をうけ、作戦を懸命に考えたところ、「旋・運・変・捻・転」の運動法則に気づいて、現在の躰道の基本動作を編み出しました。その後、数年の創作・改良を経て、昭和28年に実験的に指導を始めました。その間、新しい武道として成立させるために基本内容・理念を整え、「躰道」を確立させました。
その後、大会を開くなど競技化も整い、世界大会を行うところまで進化しています。
袴姿で飛び跳ねる
空手から生まれたものなので、空手着と同じですが、下半身は袴を着用します。
最高の技で「創作」を競う
競技には、「実戦競技」「法形競技」「展開競技」の3つがあります。
実戦競技は、他武道でいうところの「組み手」です。一本、技あり、有効によって判定される点は柔道と同じです。法形競技は、いわゆる「型」です。躰道特有の10個の要素から判定されます。展開競技は主役1名と脇役5名で技を展開し、競い合う団体戦です。
競技は、基本形を工夫して独自に技を繰り出すことが大切です。創造的な武道であるので、勝敗だけを競うのではなく、自分が出せる最高の技をもって創作を競うことが重要であると考えられています。