弓道
読み方:きゅうどう
様々な武道の中でも相手が人ではないというのが珍しい、的を相手にした武道です。ゆっくりとした動作で、集中力を高めて自分の間合いで的を射る。そしてその結果を基に反省し、次回への努力が始まります。このサイクルが精神修練となります。一人の世界に集中することこそ醍醐味で、その落ち着いた所作・雰囲気が現在でも人々に愛されています。
心を映すかのように
「自分」「弓」「的」が三位一体となることが、重要かつ意味がある弓道。他の武道は相手を倒すことを目標としたものであるのに対して、この弓道の相手は「自分」です。自分との戦いの中で、心身の鍛錬、技術の向上を行います。まるで心を映すかのように、心の動きが的を射抜く結果につながります。心を鎮め、集中するといった強さが必要となります。最高目標「真・善・美」という理念があり、それを追求します。
真:偽りのない射はどのようにあるべきかと思い求めること。
善:心を鎮め、平常心を保つこと。
美:人間として、心を清らかにし、礼を重んじて弓に向かい合うこと。
神事によく見られる馬上から的を射る流鏑馬〔やぶさめ〕など、昔ながらの慣習が色濃く残っています。
石器時代から戦国時代を越えて
弓の歴史は古く、石器時代の弓と思われるものが発見されています。これを起源として弓術は宮中や武家行事で儀式として披露されるようになっていきます。鎌倉時代になり武家社会になると攻撃用の武術として修練されるようになります。しかし戦国時代になり、槍や鉄砲などの登場によって戦闘方式が変化すると、徐々にその存在意義を失い、衰退していきます。それと同時に、精神修練用の武道として取り上げられ、確立されていきました。
明治時代や第二次世界大戦の混乱を経て、教育的・文化的価値も認められ、その地位も再び向上してきました。現在は昔の武道理念を踏襲しながらも、新しい時代に沿った、幅広い志向・愛好者層を持つ武道として展開されています。
弓矢を用いて的を射る
弓道衣(白筒袖)、袴、白足袋というスタイルで行われる弓道は、弓と矢を用いて的を射るというわかりやすいルールで競技が行われます。
本来は素足が原則とされていましたが、昭和40年代頃から白足袋が奨励されるようになったようです。
射法八節、流れるように
競技には「近的競技」と「遠的競技」の2種類あります。「近的競技」は28m先の直径36cmの的に当たったかどうかを競います。「遠的競技」は60m先の直径1mの的を狙い、中心に近いほど得点が高く、その得点を競います。
弓矢を用いた射術の法則を射法といい、この基本事項を正しく理解することから弓道は始まります。射法の形式は「射法八節」という8つの動作(足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心)すべてが流れるような一連の動作として行われます。心が動揺すると手元が狂ってしまうので、何事にも動じない強い心を作り上げることが、日々の鍛錬の中で要求されます。
■参考文献・ウェブサイト
- 武道文化の探求 入江康平 不味堂出版 2003
- 財団法人全日本弓道連盟「弓道の世界」『全日本弓道連盟』2002(2004.04.25)