浦島太郎
読み方:うらしまたろう
関連語:浦島子・竜宮女房・おとぎ草子
浦島太郎は室町時代に作られた「おとぎ草子(※)」の中のお話のひとつです。
浜辺で子ども達に苛められていた亀を、浦島太郎が助けたことが物語りの始まりです。浦島太郎は亀を助けたお礼にと、竜宮城へ招かれます。竜宮城で歓迎され、楽しい生活を送る浦島太郎ですが・・・。
※おとぎ草子・・・300以上の短編物語を集めた書物で、室町時代から江戸初期にかけて成立しました。
縁起物の象徴、鶴と亀
浦島太郎が玉手箱を開けておじいさんになってしまう、という一般に知られている物語の後、おじいさんになった浦島太郎は乙姫様と再会し、末永く幸せに暮らしたという説があります。その説によると、浦島太郎は「鶴」で乙姫様は「亀」の象徴であると言います。つまり、鶴と亀が縁起物として考えられるようになったのはこの浦島太郎と乙姫様の後日談があったからではないかと言われています。
また、おとぎ話である浦島太郎には多くの謎が存在します。その中でも、最も謎であるとされているものが「開けてはならない『玉手箱』」です。浦島太郎が竜宮城から帰ろうとすると、乙姫様は「これは絶対開けてはいけません」と玉手箱を授けます。しかし、戻ってから玉手箱を開けてしまった浦島太郎はみるみるうちにおじいさんになってしまいます。
どうして開けてはいけない箱を授けたのでしょうか?
また、なぜ浦島太郎が竜宮城から帰ると何百年もの月日が経っていたのでしょうか?
浦島太郎を巡る謎には、多くの推測が飛び交っています。
青年と仙女の恋物語
浦島太郎は「風土記(※1)」や「日本書紀(※2)」「万葉集(※3)」などに記されている「浦島子〔うらしまこ〕」の物語が原型であると言われています。浦島子の物語りは、現在の浦島太郎物語とは違い亀自身が仙女(いつまでも美しい、女性の仙人)だったようです。浦島子と亀の仙女は結ばれ、幸せな結婚生活をおくったとされています。
この浦島子の話が現在のような「浦島太郎」になったのは、室町時代の「おとぎ草子」からのようです。その後は浦島太郎として物語や童謡などの形で受け継がれ、現在に至ります。
※1風土記・・・713年に郡(県)名の由来・伝承・産物・土地の状態などを各国庁がまとめた書物のことで、平安時代移行に風土記と呼ばれるようになりました。
※2日本書紀・・・中国の歴史書にならって「日本書」を目指した日本最古の歴史書です。
※3万葉集・・・奈良時代末期に成立した和歌集です
浦島太郎
むかし、むかし、あるところに浦島太郎という心やさしい漁師が住んでいました。ある日のことです。浜辺を歩いていると一匹の亀が子供達にいじめられているのを見ました。そこで浦島太郎は亀を助けてやりました。
数日すぎたある日、いつものようにつりをしていると亀が海から出てきました。
「浦島太郎さん、僕はこの間あなたから助けられた亀です。お姫様があなたを竜宮城におつれしなさいというのでお迎えにまいりました。」
浦島太郎はさっそく亀のこうらに乗ると海の中に入っていきました。竜宮城はさんごに囲まれ、魚が泳ぐ、それはそれは美しいお城でした。お姫様はそれはそれは美しいお方でした。
「浦島太郎さん、どうかごゆっくりしていって下さい。」
浦島太郎は時間のたつのも忘れて楽しみました。まるで夢のような毎日でした。数日が過ぎ、浦島太郎は村のことやお母さんのことを思い出しました。ついに別れの時がやってきました。別れぎわ、お姫様は浦島太郎に小さな箱を手渡しました。
「浦島太郎さん、もし困ったことがあったら、この箱を開けなさい。」
亀に乗って村に帰った浦島太郎は、どうしたことか自分の家もお母さんも見つけられませんでした。村はまったく変わっていました。どうしたらよいかわからなくなってしまい、箱を開けてみることにしました。すると白いけむりが出てきて、浦島はあっという間におじいさんになってしまいました。
竜宮城で楽しく過ごしている間に、何百年も経ってしまったのです。今どこにいるのか、夢なのかわからなくなってしまいました。
※「話浦島太郎」の内容はMasahiro Kudo『old stories of japan(日本昔ばなし英訳版・日本語訳・わらべ歌・子守歌)』より転載許可を頂いた上で掲載しています。