能
読み方:のう
同義語:猿楽能〔さるがくのう〕
関連語:囃子・狂言
日本芸能の一種目。
通常は猿楽能〔さるがくのう〕を指します。
能専用の屋根のある舞台上で、シテと呼ばれる俳優が歌い舞う音楽劇です。
伴奏は地謡〔じうたい〕と囃子〔はやし〕で構成されています。
能面と呼ばれる仮面を使用する点が一番の特徴で、歌舞伎に次いで、世界的に知られている日本の舞台芸術です。
和製ミュージカル
わかり易く言えば、和製のミュージカルです。能の物語は約250程あり、主人公のほとんどが幽霊です。 物語のテーマは、神仏への信仰、戦のはかなさ、乙女の恋心、女性の嫉妬、親子の愛情、妖怪退治など様々です。
能では、登場人物がシテ方(主役)・ワキ方(主役の相手役)・狂言方(狂言を演じる人)・囃子方(囃子を演奏する人)などに分けられます。
能の演技は、ゆったりとした動作で、喜怒哀楽の表現を最小限にし、笑い声や泣き声はなく、ジェスチャーで表現することが多いようです。
屋根のある能専用の能舞台は、地謡や囃子方が座る舞台奥の屋根に傾斜がつけられていて、音が前に響き易くなっていたり、舞台中央の床下には壺が埋め込まれ、足でとーんと床を蹴れば深い余韻を残したりと、随所に工夫されています。
田楽と猿楽の融合体
農民の間で生まれた田楽と、散楽から発展して寺社の祭礼と結びついた猿楽が融合し、能が誕生しました。能は、南北朝時代から室町時代初期にかけて発達しました。能の発展に大いに貢献したのが、観阿弥〔かんあみ〕・世阿弥〔ぜあみ〕親子で、「すぐれた面」・「リズムを主体とした舞」を取り入れ、能を舞台芸術 として確立させていきました。豊臣秀吉も大の能好きで自ら舞台に立つほどだったそうです。江戸時代中期に、徳川幕府の保護のもと現在の能の形が完成しました。その後の明治維新により一時は断絶しかけましたが、政府や皇室、財閥などの後援で復興し、現在まで日本の代表的な伝統演劇として存在しています。
能といえば能面
能の一番の特徴といえば、能面です。
能面は基本的に顔よりも少し小振りに作られていて、「かぶる」と言わず「つける」といいます。
顔が面から少しはみ出していても不自然でなくピッタリとフイットしているように作られています。
能面の種類は200以上ありますが、6種類に大別することができます。
※翁〔おきな〕系
御神体そのものとして使われる面。
※尉〔じょう〕系
神が仮の姿に身を変じてこの世に登場する老人の姿の時に使われる面。
※男性系
王朝の物語に登場する男性の主人公に使われる面。
※女性系
喜怒哀楽の表情がはっきりしない、中間表情をしている面。 面を照らしたり(あおむける)曇らせたり(うつむける)することで喜びや悲しみの表情を出します。
※鬼神系
邪悪、悪霊、汚れ、邪心等を追い払う怒りの表情をしている面。
※怨霊系
戦で無念の死を遂げた武将、殺生をして死後成仏できない亡者、嫉妬に狂う女性の表情などの面。
■参考文献・ウェブサイト
- 『日本音楽大辞典』 平野健次・上参郷祐康・蒲生郷昭 平凡社 1989
- 邦楽百科辞典―雅楽から民謡まで 吉川英史 音楽之友社 1984
- 社団法人能楽協会『社団法人能楽協会公式ホームページ』(2004.7.5)
- 株式会社セクターエイティエイト『能・狂言ホームページ』(2004.7.5)