文楽
読み方:ぶんらく
関連語:浄瑠璃
文楽は人形浄瑠璃を受け継いだ、日本の伝統的な人形劇の事を言います。
もともと、江戸時代後期に人形浄瑠璃を蘇らせた植村文楽軒〔うえむらぶんらくけん〕と言う人物が創った劇場の名前だったのですが、いつの間にか芸能そのものをさすようになり、現在では正式名称となっています。
一体の人形を三人で
文楽は、太夫〔だゆう〕・三味線・人形遣いの「三業〔さんぎょう〕」で成り立つ三位一体の演芸で、男性によって演じられます。 客席の上手側に張りだした演奏用の場所を「床」と呼び、太夫と三味線弾きが、ここで浄瑠璃を演奏します。 江戸時代後期までは、「操り浄瑠璃」または「人形浄瑠璃」と呼ばれていました。つまり浄瑠璃にあわせて演じる、操り人形芝居ということです。 文楽が諸外国の人形劇と違うところは人間の微妙な心の動きを描くところです。 そのために、人形の表現を多彩で豊かなものにする必要があり、一体の人形を3人で操ることによって細かな心情を表現しています。
歌舞伎の人気を超えた!?
16世紀末に人形舞わしの芸が、浄瑠璃と一緒に演じられるようになったのが、文楽の起源と言われています。 その頃は人形遣い一人で人形を操っていました。その後、竹本義太夫という人物がたくさんの浄瑠璃を統合し、大阪に竹本座を創設、「近松門左衛門」の作品を上演し、人気を集めました。特に「曽根崎心中」などは文学的にもすぐれた内容を持ち、演劇的に飛躍的な向上を得ました。その後もたくさんの作品が上演され、文楽人気は歌舞伎を圧倒していました。しかし、江戸時代後期には、その人気にも陰りがでてきました。そんな中、植村文楽軒という人物が、大阪の松島に文楽座という劇場を作り、人形浄瑠璃は「文楽」と呼ばれるようになりました。
三位一体の芸能
文楽の演技は浄瑠璃語り、三味線弾き、人形遣いの三者で成り立っています。
※太夫
浄瑠璃を語る人のことです。いかにして浄瑠璃の内容を的確に表現し、登場人物の心を伝えるか、というのが使命です。
文楽では登場人物のすべてのセリフはもちろん、その場の情景から、事件の背景までを大夫ひとりで語ります。
※三味線
太棹三味線を使用します。演奏用の撥〔ばち〕は象牙で、厚く重いので重量感のある力強い音色を響かせます。
三味線は伴奏とは違い、情景を描き出し、心情を表現する事を大切にします。
※人形遣い
文楽では3名で人形を操ります。
主遣いが左手で首、右手で人形の右手を操作、左遣いが右手で人形の左手を操り、足遣いは両手で人形の両足を操ります。
時代物・世話物・景事
文楽の演目は「時代物」・「世話物」・「景事〔けいごと〕」の三つに分けられます。
※時代物
公家や武家社会に起こった事件や物語を題材にしたものです。江戸時代よりも前、平安から戦国時代にかけてが時代の背景となっています。
代表作:義経千本桜〔よしつねせんぼんざくら〕 etc.
※世話物
ちまたに起こった事件や物語などを題材にしたものです。庶民の日常がリアルに描かれています。
代表作:曽根崎心中〔そねざきしんじゅう〕 etc.
※景事
能狂言、歌舞伎などから独立したもので、音楽的で舞踊の要素がつよく、華やかでスピーディーなものです。
代表作:釣女〔つりおんな〕 etc.