糸操り人形
読み方:いとあやつりにんぎょう
上から垂らした十数本の糸と手板〔ていた〕という道具で人形をあやつる芸の事です。
江戸で生まれた糸あやつり人形と、大阪へ独立した竹田人形があります。
ここでは江戸糸あやつり人形について説明します。
表情豊かな動き>
江戸糸あやつり人形は、江戸時代に生まれ、江戸を中心に現在まで伝えられています。 人形の肩や頭〔かしら〕、主要な関節に付いている10数本の糸で、人形を操ります。手板(※)というコントローラーの役目をする操作板をあやつる事によって、首を自由自在に動かすことができ、顔を横に振ったり、頭を下げたり、あごを出したりして、人間味の溢れる、非常に繊細で、表情豊かな動きを演じる事ができます。 現在では、劇場で演じられる以外にも、大道芸として道端で演じるパフォーマーも存在しています。
※手板
長方形の板の前後(2ヶ所)に「ひょうたん型」の穴をくりぬき、人形を操作する糸を吊るした物。
現在まで370年も継承されてきた
日本の糸あやつり人形はいくつかの流れがあり、日本独自の人形〔ひとかた〕を糸に吊って生まれたものや、散楽の一つとして中国から流れてきたものなどそのルーツは様々です。江戸時代に江戸浄瑠璃の祖である結城孫三郎〔ゆうきまごさぶろう〕という人物が結城座という劇団を旗揚げした事によって、糸あやつり人形は、一般庶民の娯楽として人気を集めました。約370年もの長い年月を経て、現在でも結城座では伝統的な糸あやつり人形を継承し、『国記録選択無形民俗文化財』・ 『東京都の無形文化財』に指定されています。
手板の操作がポイント
人形には、15本から25本までの糸が付けられていて、体重を支える2本の肩糸と頭を上下に動かす1本の頭糸をキキ糸と呼び、この3本が常にピンと張った状態になっています。このほかの糸は遊び糸と呼ばれ、人形の動きをより細かくリアルに表現する事を可能にしています。 糸の先は「手板」と呼ばれる操作板に結ばれています。手のひらが上になるように手板を持ち、人形をあやつります。